
賃貸物件のリフォームは築年数で変わる?費用や効果もあわせて解説
築年数が経過した賃貸物件をお持ちの方の多くが、「空室が多い」「家賃が思うように上がらない」などの悩みを抱えていませんか。建物の老朽化や設備の古さは、物件の魅力や収益力に大きな影響を与えます。本記事では、築年数ごとに最適なリフォームやリノベーションの方法、その費用目安について分かりやすく解説します。賃貸経営の安定と物件価値の向上を目指すために、ぜひ参考にしてください。
築年数が古い賃貸物件の現状と課題
日本全国の賃貸市場では、「築古物件」、すなわち築20年以上の物件が全体の約三分の一(約32.4%)を占めています。このため、築古物件の管理や改善はオーナーの皆さまにとって他人事ではありません。
築年数が増すにつれて家賃は下がる傾向があり、不動産経済研究所によると、築10年で新築の賃料の約85%、築20年で約70%、築30年超では約65%まで下落します。例として東京23区の1LDKでは、新築12万円が築30年で約7万8千円まで下がるケースもあります。
築古物件が抱える主な課題として、以下の点が挙げられます:耐震性の不安(旧耐震基準〈1981年5月以前〉の物件では大地震時に倒壊リスクが高くなる)、断熱性の低さによる光熱費の増加、設備の老朽化によるトラブル発生などです。具体的には、築30年での光熱費は月2.1万円、築40年以上では2.5万円と、新築の1.2万円から大幅に上昇する例もあります。給湯器やエアコン、水回り設備の故障なども頻度が高まります。
こうした課題が重なることで、原状回復だけでは入居者の満足を得られず、空室リスクの増大や収益性の低下につながります。そのため、築古物件に対しては単なる補修ではなく、居住快適性や耐震性を向上させるリフォームが必要になります。
| 課題 | 内容 | 影響 |
|---|---|---|
| 耐震性 | 旧耐震基準で建築された物件は地震時の倒壊リスクが高い | 安全性の懸念、入居者減少 |
| 断熱・光熱費 | 断熱材の劣化などにより光熱費が高め | ランニングコストが負担増 |
| 設備老朽化 | 給湯器や水回りなどの故障が多発 | 修理費増・入居者不満・退去要因 |
築年数別に見るリフォーム・リノベーションの目的と効果
賃貸物件の築年数に応じて、オーナー様がリフォームやリノベーションを行う主な目的と得られる効果は異なります。以下に、その傾向を整理しました。
| 築年数 | 目的 | 期待できる効果 |
|---|---|---|
| 築20年以上 | 収益改善・設備更新・耐震・断熱性向上 | 入居率維持、家賃下落抑制、建物寿命延長 |
| 築30年以上 | 競争力維持・大規模修繕・リノベーション | 空室リスク低減、老朽化対策、資産価値維持 |
| 築古(30年以上)全般 | 借主属性向上・融資条件改善 | 安定的な収益基盤・金融評価の向上 |
築20年以上の賃貸物件では、水まわりや壁・床の劣化が進む一方で、リフォームを行うことで家賃の下落を抑え、入居者の定着に繋げることが可能です。例えば、給排水設備や外壁・屋根の劣化対策により、建物全体の寿命を延ばせますし、空室を減らす効果も期待できます。
一方、築30年以上の物件は、老朽化が進むことで空室リスクが高まりがちです。そのため、大規模なリフォームやリノベーションを講じることで、競争力のある魅力を再び獲得するとともに、資産価値の維持につなげることが重要です。築古物件では減価償却が終了している場合もあり、修繕による価値を高めた後の長期運営は、収益安定につながります。
さらに、リノベーションを行うことで、借主属性の向上や金融機関からの融資評価が改善された事例も報告されています。築古物件の収益性を根本から改善したいオーナー様には、大規模な改修を通じた競争力再構築が大きな意味を持つでしょう。
築年数に応じたリフォーム内容の目安と費用感
以下は、築年数ごとに一般的に必要とされるリフォーム内容とその費用の目安を、賃貸物件オーナー様が実際のご判断に役立てやすいよう整理したものです。物件の規模や仕様、地域によって変動することがありますので、あくまでもご参考としてご覧ください。
| 築年数の目安 | 主なリフォーム内容 | 費用の目安 |
|---|---|---|
| 築5年程度 | ハウスクリーニング、クロス補修、畳表替えなどの軽微な原状回復 | 3万円~15万円程度 |
| 築15年程度 | クロス全面張り替え、水回り設備(トイレ・洗面台・給湯器)の交換、水栓・換気扇の見直し | 80万円~200万円程度 |
| 築25年以上 | フローリング張り替え、キッチンや浴室などの大型交換、給排水管や外装のメンテナンス | 数百万円~1000万円以上 |
なお、築5年程度の物件では大規模な劣化が少なく、軽微なクリーニングや修繕で十分な場合が多く、費用も比較的低く抑えられます(目安:0万円~10万円程度)。特にクロスの汚れや畳の表替えは3万円~10万円程度で対応可能です。築浅の賃貸物件では通常、清掃程度で募集できる場合も多くあります。
築15年程度になると、クロスの全面張り替えやトイレ・洗面台・給湯器などの水回り設備の交換が必要になることが増えます。具体的な費用としては、トイレ交換が10万~15万円、洗面台が10万~20万円、給湯器交換が8万~15万円、クロス全面張り替え(マンション):約25万円~、戸建て:約45万円~という目安があります。これらを総合すると、合計で80万円~200万円程度が一般的です。
築25年以上になると、より大規模なリフォームが必要になることが多くなります。たとえば、12畳リビングのフローリング張り替えで約20万円、それ以外の間取りや設備を含めると物件全体で100万円以上に達する場合もあります。また、全面的な間取り変更や断熱・耐震補強などを含む場合、フルリノベーションとして数百万円からはじまり、1000万円以上の費用になるケースもあります。大型の施工では、仕様や規模によって相場が大きく異なるため、計画段階で必ず専門会社から概算を取得されることをおすすめします。
築年数古い賃貸物件の収支改善につなげるためのリフォーム戦略
築古となった賃貸物件において、収支を改善するためには、ただ単に修繕を行うだけではなく、戦略的なリフォームを計画することが重要です。ここでは、入居率の向上や家賃の維持向上、建物寿命の延長、収益性の強化につながる具体的な戦略をご紹介します。
| 目的 | リフォームの内容 | 期待される効果 |
|---|---|---|
| 空室対策・家賃維持 | 水回りの現代化(システムキッチン・バストイレ別・独立洗面台など) | 家賃を月額1〜3万円上げられる事例あり |
| 建物寿命の延長 | 内装全面更新(フローリング・壁紙・照明)、和室→洋室化 | 入居ニーズ対応、若い入居者の獲得を期待 |
| 節税とキャッシュフロー改善 | リフォーム費用を資本的支出として減価償却 | 税引き後キャッシュフローの向上、課税所得の圧縮 |
まず、国土交通省の調査によると、入居者が重視する設備として「システムキッチン」「独立洗面台」「宅配ボックス」が上位に挙げられており、築30年以上でもこれらを導入した場合、家賃を8〜12%上昇させた実例があります。たとえば、都内木造アパートにおいて、約280万円のリフォームを施し、家賃を5.8万円から6.5万円に引き上げ、空室期間を短縮したというケースでは、年間で約16.8万円の増収を実現しています。投資回収期間は約17年ですが、建物の寿命延長や出口価格の上昇も見込めるため、総合的なリターンは大きくなります。
さらに、2025年版の調査では、リノベーションの領域で投資効果が高い施策として以下が挙げられています。水回りの現代化(投資額150~250万円/戸)によって、家賃を月額1〜3万円上昇させる効果、内装の全面リニューアル(投資額100~200万円/戸)によって家賃が月0.5〜2万円上昇する効果などが確認されています。仮に200万円の投資で月3万円の家賃上昇を実現できれば、年間で36万円の収益増となり、約5.5年で投資を回収できる計算です。
また、リフォーム費用を減価償却として扱うことで、税引き後のキャッシュフローにプラスの影響を与えることが可能です。たとえば、築20年の木造アパートに3000万円を建物として割り振った場合、耐用年数6年で計算すると毎年500万円の減価償却が可能となります。これにより、帳簿上の課税所得が大幅に圧縮され、節税効果と実質的な収支改善が期待できます。
これらの戦略を組み合わせることで、古くなった賃貸物件も十分に収益改善につなげることができます。入居率の向上、家賃設定の最適化、耐用年数延長による資産価値の維持、そして税務面での効率化によって、築古物件を「高収益資産」へと変えることが可能です。
まとめ
本記事では、築年数が経過した賃貸物件における現状と課題、築年数別のリフォームの目的や効果、各種リフォームの内容と費用感、そして収支改善のための戦略について解説いたしました。築年数が進むと建物性能や入居者満足度が低下しがちですが、適切なタイミングでリフォームを行うことで家賃の維持や入居率向上、建物寿命の延長など多くの効果が期待できます。費用面での不安を感じる方もいらっしゃいますが、計画的なリフォームは将来的な収益改善につながりますので、ぜひご自身の物件の状態を見直し、前向きな対応をご検討ください。