
賃貸物件のリフォーム助成金はどんな制度?申請前に知っておきたいポイントを紹介
賃貸物件をお持ちの皆さま、「リフォームしたいけれど費用が心配」と感じたことはありませんか。実は、国や自治体がさまざまな助成金制度を設けており、上手に活用することで負担を大きく減らすことが可能です。しかし、申請には注意点や条件も多く、わかりにくい部分も少なくありません。この記事では、古い賃貸物件を所有している方に向けて、リフォーム助成金制度の基礎や、具体的な活用方法、申請時のポイントまでわかりやすく解説します。賃貸物件の価値向上と経済的な負担軽減のヒントを、ぜひ最後までご覧ください。
国のリフォーム助成金制度の概要と賃貸物件への適用可能性
国では、省エネリフォームや断熱改修、高効率給湯器設置などを対象としたリフォーム助成制度を整備しており、賃貸物件の所有者も活用できる場合があります。例えば「既存住宅における断熱リフォーム支援事業」では、一戸建てでは最大120万円、集合住宅(賃貸マンション含む)では戸当たり15万~20万円を上限に、補助対象経費の30%以内で補助が受けられます。
また、「子育てグリーン住宅支援事業」や「先進的窓リノベ2025事業」など、複数の国の助成制度は、補助対象が重複しなければ併用可能です。工事を行う事業者が登録されていればワンストップで申請できる仕組みもありますので、手続きの負担を軽減できます。
ただし、申請には注意点があります。ほとんどの制度では、工事着手の前に申請および許可取得が必須となっており、着工後の申請は対象外となります。また、申請には事前の省エネ診断や等級の把握が要件となる場合もありますので、必ず工事前に制度の詳細を確認して進めることが大切です。
以下に、主な制度と要点をまとめた表を示します。
| 制度名 | 補助内容・上限 | 賃貸所有者が注意すべき点 |
|---|---|---|
| 既存住宅における断熱リフォーム支援 | 戸建:最大120万円 集合住宅:15〜20万円/戸(経費の3分の1以内) | 着工前の申請必須、省エネ診断など要件確認が必要 |
| 子育てグリーン住宅支援・先進的窓リノベ | 各種リフォーム支援(窓や断熱材など対象) | 要件が異なるため、併用可否や登録事業者の確認が必要 |
| 複数制度の併用 | 併用できる場合あり | 制度ごとに申請手順が異なるため、事前に整理して準備すること |
地方自治体の助成制度と賃貸物件への活用方法
地方自治体では、賃貸物件の所有者にも活用可能なリフォーム助成制度を設けているところが多くあります。たとえば、東京都目黒区では「住宅リフォーム資金助成」という制度があり、賃貸用の空き室を対象としたバリアフリーリフォームにも対応しています。高齢者や障がいのある方が住みやすい住環境の整備を目的とし、手すり取付や段差解消、引き戸への交換などに対し、工事費用の10パーセント(税抜)を最大10万円まで助成しています(工事費用の見積額と実際額の低い方に基づく)。
なお、目黒区の制度では、助成を受ける際には必ず工事着工前に申請し、また国や東京都が提供するリフォーム助成制度と併用できない点に注意が必要です。また、予算の範囲内での先着順受付であるため、希望する場合には早めの確認と申請が大切です。
以下は、目黒区における賃貸用リフォーム助成の概要を簡潔にまとめた表です。
| 支援内容 | 対象工事 | 助成額 |
|---|---|---|
| 空き室バリアフリーリフォーム | 手すり設置・段差解消・引き戸化など | 工事費の10%(上限10万円) |
| 一般リフォーム(賃貸併用住宅含む) | 専有部分の修繕・増改修等 | 工事費の10%(上限10万円) |
| 省エネリフォーム(対象工事) | 断熱窓・複層ガラス・断熱ドア等 | 工事費の20%(上限20万円) |
(注:表中の情報は目黒区に限った例です。速やかに最新の自治体情報を確認ください)
このような自治体制度を検索・確認する際のポイントとしては、以下の点が重要です。
- 対象となる工事内容が賃貸用として認められているか(例:空き家・空き室へのバリアフリー化)
- 他の助成制度との併用可否や重複時の扱い(返還義務等)がどうなっているか
- 申請は先着順の場合が多いため、予算枠の有無や締切時期をしっかり把握しておくこと
賃貸物件の所有者の方は、このような地方自治体の支援制度を上手に活用することで、入居者への配慮や物件の価値向上につながります。お住まいの自治体の公式ホームページや相談窓口を通じて、最新情報を確実に押さえておきましょう。
賃貸物件所有者が活用できるその他の助成制度(住宅セーフティネット等)
賃貸物件をお持ちのオーナー様は、「住宅セーフティネット制度」を活用することで、設備改修の補助や融資などの支援が受けられる場合があります。以下に、主な制度内容と留意点を整理いたします。
| 制度名 | 支援内容 | 留意点 |
|---|---|---|
| セーフティネット専用住宅改修事業(国) | 改修費用の1/3を補助、上限50万円/戸(バリアフリー等加算あり) | 登録後10年間の住宅運用と定期報告義務あり |
| 東京都「東京ささエール住宅」貸主応援事業 | 耐震・バリアフリー・見守り機器・保険料等への補助メニュー有り | 専用住宅として登録し、登録後10年間の維持義務あり |
| 住宅金融支援機構 リフォーム融資 | 登録住宅または認定住宅へリフォームするための低金利固定融資 | 事前相談のうえ、適用基準を満たした住宅に限る |
まず、国の「セーフティネット専用住宅改修事業」では、空き家や既存賃貸住宅を対象に、住宅確保要配慮者が入居できる住宅として改修する際に、改修費用の一部(3分の1、最大50万円/戸)の補助が受けられます。さらに、バリアフリー改修などを行えば加算もあり、令和7年度は2025年4月2日から12月12日まで申請を受け付けています。補助を受けた住宅は登録後10年間、専用賃貸住宅として運用し、毎年1回程度の状況報告が必要です。また、大臣承認が必要な変更には注意が必要です。
東京都の「東京ささエール住宅」貸主応援事業では、耐震改修費・バリアフリー改修・見守り機器の設置・少額短期保険料など多様な補助メニューがあり、ご自身のご希望や対応内容に応じて選べます。耐震改修費補助では費用の5分の6を補助し、1棟あたり新規登録住戸につき最大250万円が上限です。見守り機器設置や保険料補助についても補助率は2/3で、いずれも専用住宅として登録後10年間の維持が条件となります。
さらに、住宅金融支援機構が提供する「賃貸住宅リフォーム融資(住宅セーフティネット)」では、登録住宅または認定住宅とするための改修に対して、最長20年の全期間固定金利の融資が利用できます。金利上昇リスクを避けたいオーナー様にとって安心の選択肢となります。事前相談や所定の手続き・基準確認が必要です。
いずれの制度も、オーナー様がご自身で申請手続を行う必要がありますが、改修の内容や申請先に応じた支援が受けられる貴重な機会です。制度の適用要件や申請時期、運用義務など、詳細はお気軽に当社までご相談ください。
申請に向けたチェックリストと賃貸物件所有者が知っておくべき手続きポイント
助成金の申請をスムーズに進めるためには、準備段階から着工後までの流れを整理し、必要事項を確実に押さえることが重要です。以下の表で主なポイントをまとめました。
| 確認項目 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 申請時期 | 募集開始から予算到達前 | 早期終了や先着順の制度もあるため迅速な行動が必要です |
| 必要書類 | 申請書、工事見積書・施工計画書、所有者証明書等 | 制度ごとに異なるため自治体や国の要領を確認してください |
| 着工前の要件 | 交付決定前には着工しないこと | 契約や工事を先に進めると助成対象外となる場合があります |
申請時期については、たとえば2025年実施の「賃貸集合給湯省エネ2025事業」では、申請受付期間が4月14日から12月31日までであり、予算上限に達した時点で終了となりますので、ご注意ください。
必要書類としては、申請書類のほか、リフォームの内容を示す見積書や施工計画書、物件の所有者確認のための登記簿謄本や課税通知書などの添付が求められる場合があります。また、主に国の制度や自治体の制度では、工事前の写真提出が必須とされるケースもあるため注意が必要です。
制度の組み合わせを活用したい場合は、国と自治体制度を併用可能かを事前に確認してください。たとえば、省エネ改修支援やバリアフリー改修制度と給湯器の省エネ交換制度との併用が可能なこともあります。複数制度を組み合わせて資金負担を軽減するためには、制度の公募要領や各窓口での確認が不可欠です。
助成金を最大限活用するための事前準備としては、次の点も留意してください。まず、インスペクション(建物状況調査)などでリフォーム内容を整理し、申請内容を明確にしておくこと。次に、複数の施工業者から見積もりを取得し、費用内訳や施工内容を比較検討すること。そして、スケジュール管理をしっかり行い、「申請→交付決定→着工→完了報告→支給」といった一連の流れを見える化しておくことが大切です。最後に、助成制度の条件変更や詐欺に遭わないためにも、公式情報を自己確認する姿勢を持ち、訪問営業等で即断せず慎重に進めることが重要です。
まとめ
古くなった賃貸物件を所有されている方にとって、国や地方自治体のリフォーム助成金制度は、費用負担を軽減しながら資産価値を維持・向上させる有効な手段です。制度によっては、申請のタイミングや必要書類、工事着工前の申請義務など注意すべき点があります。住宅セーフティネットなどの特別な補助もあわせて活用することで、より幅広い支援が受けられます。各種助成制度の内容を事前にしっかり確認し、必要な準備や手続きを整えることで、無理なくスムーズなリフォームが実現可能となります。今後の賃貸経営に、ぜひ各種制度の活用を検討してみてください。