マンションオーナーの節税方法は何がある?基本や注意点も紹介
マンションを所有されている方は、毎年の税金負担に頭を悩ませることが多いのではないでしょうか。「少しでも節税できないものか」と考えることは、ごく自然なことです。しかし、具体的にどのような方法を取れば良いのか分からないという声も多く聞かれます。この記事では、減価償却や経費計上、青色申告によるメリット、さらには損益通算やその他の節税制度について、初めての方でも理解できるよう丁寧に解説いたします。税金対策の基本を知り、賢く資産を守る一歩としてお役立てください。
(減価償却と経費計上による節税の基本)
マンションオーナーが節税を上手に行うための基本は、減価償却と経費として計上できる支出の把握です。まず、減価償却とは、建物や設備にかかった購入費用を、法定耐用年数にしたがって少しずつ経費に振り分ける会計手法です。これにより帳簿上の利益が圧縮され、所得税や住民税の負担を軽減できます。特に鉄筋コンクリート造(RC造)は約47年の耐用年数とされ、建物だけでなくエアコンや照明、エレベーターなどの設備も個別の耐用年数で減価償却できます。一方で、土地は時間の経過によって価値が減らないとみなされるため、減価償却の対象外となります。合理的に土地と建物・設備を分けて計上するのが重要です(例:取得価格のうち建物に○○%、設備に○○%など)。
さらに、マンション経営において経費として認められる主な支出には、以下のようなものがあります:
| 経費項目 | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 損害保険料 | 火災保険・地震保険など | 契約期間に応じて分割計上する必要あり |
| 管理・仲介手数料 | 入居募集や管理の代行費用 | 支払い内容を明確に区分して記帳 |
| ローン利息 | 賃貸用マンション購入のための借入金の利息 | 元金は対象外なので注意 |
これらに加え、固定資産税・都市計画税、修繕費(原状回復など)、専門家(税理士・司法書士)への報酬なども経費として認められます。ただし、ローン返済の元本や所得税・住民税などは経費扱いできません。また、修繕費は一定の金額(たとえば1か月あたり20万円以内)であれば経費にできますが、それを超える場合は資本的支出として資産計上し減価償却で計上する必要があります。
こうした節税の基本をリズム良く押さえることで、帳簿上の利益を上手に抑え、税金の軽減につなげやすくなります。必要な項目を漏れなく整理し、適切な処理を心がけましょう。
青色申告による節税メリットと手続き要件
マンションオーナーの方が「青色申告」を活用して節税するには、まず、青色申告特別控除と青色事業専従者給与という二つの大きな柱があります。
以下の表に、主なメリットとその要件をまとめました。
| メリット | 内容 | 要件の概要 |
|---|---|---|
| 青色申告特別控除 | 最大65万円(または55万円・10万円)を所得から控除 | 複式簿記、貸借対照表の添付、e‑Taxまたは電子帳簿保存、事業的規模(10室以上等) |
| 青色事業専従者給与 | 家族への給与を経費に計上可能 | 届出の提出、専ら従事、適正額、事業的規模を満たす |
まず、青色申告特別控除についてです。複式簿記での記帳と損益計算書および貸借対照表の添付を行い、しかも e‑Tax での電子申告または電子帳簿保存があれば、最大で65万円の控除を受けられますが、これらの要件を満たさない場合には55万円、あるいは白色申告並みの10万円にとどまり得ます。さらに、マンション経営が「事業的規模」として認められるためには、独立した貸室が10室以上などの基準を満たすことが前提となります。
次に、青色事業専従者給与についてです。これは生計を共にする家族へ支払う給与を、一定の要件の下、必要経費として認めてもらえる仕組みです。要件としては、税務署への「青色事業専従者給与に関する届出書」の提出(毎年3月15日まで)、その届出の範囲内の支給であること、「専ら従事」していること(例外的に2分の1以上でも可)、そして給与が労働の対価として相当であることが求められます。加えて、マンションオーナーの賃貸業が「事業的規模」に達していることも必要条件です。
これらをバランスよく組み合わせることで、所得圧縮による節税効果を高めることができます。ただし、青色事業専従者給与を設定すると、その家族は配偶者控除や扶養控除の対象外となることや、適正額を超えると税務署に否認される可能性などにも注意が必要です。
損益通算と税戻しの仕組み
マンションオーナーさまにとって、不動産所得が赤字になった場合でも、その損失を他の所得と相殺できる「損益通算」は大きな節税効果を持ちます。例えば、不動産収入より減価償却費や修繕費などを差し引いて赤字になったとき、その赤字を給与所得など黒字の所得から差し引くことが可能です。すると、源泉徴収された所得税が還付され、住民税(おおむね一律10%)も軽減される場合があるのです(給与所得等との損益通算)。
| メリット | 内容 |
|---|---|
| 税金還付 | 給与所得と相殺し、源泉徴収された税金が還付される |
| 住民税軽減 | 課税所得が下がることで、住民税も軽減される可能性がある |
| 帳簿上の赤字でも有効 | 減価償却費による帳簿上の赤字でも損益通算の対象になる |
ただし、注意していただきたい点もあります。まず、土地の取得にともなう借入金の利子のうち、土地部分に相当する利子は損益通算の対象外とされます。このため、土地と建物を一括購入した場合は、借入金をまず建物取得に充当し、その後土地取得に充当されたものとして按分し、損益通算できる部分を計算する必要があります(例:借入利子100万円のうち土地割合60%ならば60万円は通算不可)。
また、その他の例外もおさえておきましょう。別荘など趣味・娯楽目的で所有する不動産からの所得は損益通算の対象外ですし、国外中古建物の減価償却費による赤字についても通算不可とする特例が定められています。
とはいえ、節税面でのメリットは大きいです。初年度など、設備導入や修繕費がかさむ年に赤字が出た場合でも、給与所得と相殺することで税金の還付や住民税軽減につながる可能性が高まります。確定申告の際は、これらの制度を正確に使って、賢く手続きしていただきたいと思います。
その他の節税制度と注意点
マンションオーナーとして、さらに節税を検討するなら、いくつかの制度活用は見逃せません。まず、「小規模企業共済」への加入です。この制度では、支払った掛金が全額「所得控除」となり、節税効果が高いのが特徴です。掛金は月額千円から七万円まで選べ、年間最大で八十四万円まで掛けることが可能で、これがそのまま課税対象所得から差し引かれますから、高所得者ほど効果が大きいといえるでしょう。また、将来的に解約した際には「退職所得」として扱われ、高額な退職所得控除を受けられるため「入口」でも「出口」でも税制上の優遇があります。ただし、ご自身が契約者である掛金に限られ、一緒に住む配偶者名義の契約に支払った掛金は控除対象にならない点には注意が必要です。ですので、ご契約の際はご自身名義での加入を確実に行ってください。
次に紹介するのは、「住宅用地の特例」による固定資産税の評価減です。住宅が建っている土地には、200平方メートル以下の部分を「小規模住宅用地」として評価額の1/6で課税されます。200平方メートルを超える部分については「一般住宅用地」として評価額の1/3で課税され、都市計画税にも軽減が適用されるのが魅力です。土地の用途が変わらない限り、適用期限なく続く制度ですから、マンション敷地を含む所有地の場合はぜひ確認したい制度です。
最後に、経費計上に関する注意点です。節税を目的に経費を増やしすぎると、手元の資金が苦しくなるリスクがあります。また、経費として扱うには、それを証明する領収書などの保存が法律で義務付けられています。たとえば、大きな修繕や改修工事などを経費計上する場合は、工事内容・金額の明細や領収書の保存を確実に行いましょう。手元資金と記帳管理のバランスを見極めつつ、無理のない節税を心がけることが大切です。
| 制度・注意点 | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 小規模企業共済 | 掛金が全額所得控除、将来は退職所得として有利 | 契約者本人のみ適用可能 |
| 住宅用地の特例 | 土地部分の固定資産税が評価額の1/6または1/3に | 用途が変わらない限り継続的に適用 |
| 経費計上の注意点 | 領収書保存義務、手元資金とのバランスに注意 | 無理な経費計上は資金繰りを圧迫 |
まとめ
マンションオーナーの方が賢く節税するためには、減価償却や経費計上をはじめ、青色申告や損益通算など、さまざまな制度を正しく活用することが大切です。これらの節税方法は、確実な手続きや適切な管理が求められる一方で、大きな税負担の軽減につながります。各種制度の仕組みや注意点を理解し、計画的に実践すれば、資産を守りながら安定した経営が期待できます。身近な疑問もお気軽にご相談ください。