賃貸物件のリフォームで節税できる理由は?知っておきたい基礎知識も紹介の画像

賃貸物件のリフォームで節税できる理由は?知っておきたい基礎知識も紹介

マンションオーナー

賃貸物件のオーナーの皆さま、リフォームにかかる費用や節税対策について悩んでいませんか?リフォーム工事が経費になるのか、それとも減価償却の対象になるのかによって、税金の負担やキャッシュフローは大きく変わります。また、省エネ改修や設備更新による税額控除や補助金制度も活用すれば、さらに賢く節税が可能です。本記事では、賃貸物件オーナーが知っておきたい最新のリフォーム節税術や公的支援制度、帳簿処理のポイントをわかりやすく整理して解説します。

リフォーム費用の“修繕費”と“資本的支出”の違いと節税効果

賃貸物件オーナーの方にとって、「修繕費」と「資本的支出」の区分は、所得税や住民税の節税に直結する重要なポイントです。国税庁の見解によれば、修繕費とは「資産を維持管理・原状回復するための支出」であり、その年度に全額を必要経費として計上可能です。一方、「資本的支出」とは「資産価値や耐久性を高める目的の支出」で、一括経費にはできず、固定資産として資産計上後、法定耐用年数に応じて減価償却していきます。

判断基準として、次のような簡易判断ルールが用いられます:(1)工事費が20万円未満、(2)3年以内の周期で行われるもの。このいずれかに該当すれば修繕費として計上可能です。加えて、明確な判断が難しい場合は、60万円未満または前期末取得価額の10%以下であれば修繕費として扱うことが認められています。

複合的なリフォームの場合には、支出額のうち少ない方(支出金額の30%相当額または前期末取得価額の10%相当額)を修繕費として計上し、残額を資本的支出として処理する方法も認められています。

下表では、節税という観点から「修繕費」と「資本的支出」の違いとその会計処理を整理しました:

区分定義・条件会計処理・税務上の扱い
修繕費 原状回復や維持管理目的、一括費用条件(20万円未満・3年以内・60万円未満・前期取得額10%以下など)に該当 その年度に必要経費として全額計上。即時節税効果あり
資本的支出 価値向上・耐久性向上目的で、上記簡易条件に当てはまらない支出 固定資産として計上し、耐用年数に応じて減価償却。節税効果は徐々に

このように、原状回復に近い修繕であれば年度内に経費化でき、節税効果を直ちに得られますが、価値を高めるリフォームでは、費用の処理方法により節税までのタイミングが異なります。判断に迷われる場合は、税務上のリスクを避けるためにも、税理士などの専門家への相談もおすすめします。

節税につながるリフォーム・設備更新と公的支援制度

賃貸物件オーナー様が活用できる、税額控除や補助金制度には、以下のような制度があります。

制度名内容補助・控除額
省エネリフォーム減税(所得税・固定資産税) 断熱工事、窓・壁・床・天井の断熱化、高効率給湯器や太陽光発電設備などによる省エネ改修 所得税:工事費の10%控除(最大62.5万円、太陽光併用で67.5万円)/固定資産税:翌年度分の1/3減額(120㎡まで)
長期優良住宅化リフォーム推進事業 インスペクションや維持計画、耐震・劣化対策・省エネなどの性能向上リフォーム 認定長期優良住宅型:160万円/戸、評価基準型:80万円/戸(条件により最大210万円/戸)

まず、省エネリフォーム減税は、賃貸物件でも省エネ性能が向上するリフォームを行った場合、所得税と固定資産税の優遇が受けられます。所得税では、省エネ改修の工事費相当額の10%が控除され、最大62.5万円、かつ太陽光発電を併用すれば67.5万円まで可能です。また、固定資産税は、リフォーム完了の翌年度に120㎡相当分まで1/3が減額されます。この制度は、省エネ性能向上に直接結びつくリフォーム(断熱化・高効率給湯器など)が対象であり、要件を満たせば賃貸物件でも適用対象になります。なお、居住・入居条件があるため、賃貸物件に適用する場合にはその条件をご確認ください。

次に、国土交通省が実施する「長期優良住宅化リフォーム推進事業」は、建物の耐震性や省エネ、劣化対策などの性能向上リフォームを支援する制度です。申請にはリフォーム前のインスペクション実施と維持保全計画の作成が求められます。補助額は、認定長期優良住宅型で160万円/戸(条件により最大210万円/戸)、評価基準型で80万円/戸(同じく最大130万円/戸)と、高額なリフォームに対する支援が期待できます。

申請時のタイミングとしては、リフォーム着工前にリフォーム事業者による「事業者登録」およびインスペクション、維持計画登録が必要です。これを怠ると補助対象外となるため、早めの準備が重要です。また、年度ごとに予算が埋まり次第受付が終了するケースもあるため、早期申請が望ましいです。

まとめると、賃貸物件オーナー様では、まず省エネ性を高めるリフォームで税額控除を狙いつつ、さらに長寿命化や耐震・省エネ性能向上を見据えたリフォームでは、長期優良住宅化リフォーム推進事業の活用がおすすめです。いずれの場合も、着工前の準備と要件確認が成功の鍵となります。

減価償却による帳簿上の節税メリットとキャッシュフロー改善

賃貸物件オーナーの皆さまにとって、リフォームや設備更新と並び重要なのが「減価償却」を活用した節税とキャッシュフロー改善です。ここではその仕組みと実際の影響、さらに確定申告に必要な処理について、わかりやすく解説いたします。

1. 減価償却の仕組みと帳簿上での経費化による課税所得圧縮の効果
減価償却とは、建物や設備にかかった取得費用を、その耐用年数に応じて毎年少しずつ経費として計上する方法です。実際に現金が流出しなくても経費化できるため、帳簿上では課税所得が圧縮されます。たとえばワンルームマンション投資において、家賃収入が120万円、経費30万円、減価償却費40万円の場合、課税所得は50万円となり、税負担を軽減できます。

2. 家賃収入との関係を踏まえたキャッシュフローへの影響
減価償却費は現金支出を伴わないので、キャッシュフロー(手元に残る現金)は所得より多くなります。たとえばある物件で所得が-(赤字)でも、減価償却費を加えればプラスのキャッシュフローになるケースもあります。これは長期的に手元資金を確保するうえで非常に効果的です。

3. 確定申告時の処理と必要書類の準備
確定申告では、減価償却費を適切に計上するために以下のような書類が必要です:

項目必要書類内容
減価償却費の計算購入時の売買契約書や固定資産税評価証明書などをもとに、建物部分の耐用年数等を明記した計算書
申告区分青色申告の場合は貸借対照表や損益計算書を含む青色申告決算書、白色申告の場合は収支内訳書
帳簿・領収書類仕訳帳・固定資産台帳などの帳簿類および領収書、請求書などの証拠書類
ご自身が青色申告を選択している場合は、複式簿記に基づく記帳と決算書の作成が求められます。

以上のように、減価償却を活用することで帳簿上の課税所得を抑え、現金収支(キャッシュフロー)を改善しながら、確定申告でも適切な処理を行うことが可能です。適切な書類を準備し、長期的な資金繰りを見据えた経営にお役立てください。

修繕積立制度による将来備えと相続節税の視点

賃貸物件オーナー様向けに、「賃貸住宅修繕共済」という大規模修繕に備える共済制度をご紹介します。本制度は、賃貸オーナー様が将来必要となる屋根や外壁、共用部の修繕資金を計画的に備えられる仕組みで、掛け金を支払うことで積立ながら、支払った掛け金は全額必要経費として認められますので税務上の節税効果が得られます。

さらに、共済制度では掛け金が“掛け捨て”扱いであり、未請求の積立金は相続財産とならず、相続税の課税対象から除外されるという特長があります。また、オーナー様が亡くなられた場合でも、積立金に対する共済金の請求権は事業承継者(相続人等)に引き継がれますので、制度を継続して活かすことが可能です。

加入対象は、全国賃貸住宅修繕共済協同組合の代理店を通じて加入された賃貸物件のオーナー様で、制度利用にあたっては物件ごとに長期修繕計画の策定など事前準備が必要です。以下の表でポイントを整理しています。

項目内容備考
経費算入の可否掛け金は全額必要経費課税所得圧縮に有効
相続税の取り扱い掛け捨て部分は課税対象外相続財産の圧縮にもつながる
請求権の継承相続人・事業承継者が継続可能オーナー死亡後も制度活用可

本共済制度により、長期的な修繕資金の備えとともに税務面・相続面でのメリットを同時に享受できる点は、賃貸経営の安定性向上に非常に役立ちます。制度活用をご検討の際には、長期修繕計画の作成や制度の対象要件について専門家とご相談されることをおすすめいたします。

まとめ

賃貸物件のリフォームは、修繕費や資本的支出の区分を正しく理解し、節税につなげることが重要です。省エネ改修や補助金活用も大きなメリットとなり、減価償却や修繕積立共済の利用でキャッシュフローや相続時の税負担も軽減できます。日常的な計画性と制度の活用ノウハウが、賢い資産運用のポイントです。知識を身につけて、賃貸経営をより有利に進めましょう。

お問い合わせはこちら

”マンションオーナー”おすすめ記事

  • 賃貸物件のリフォーム費用はどれくらい?費用相場や節約ポイントを解説の画像

    賃貸物件のリフォーム費用はどれくらい?費用相場や節約ポイントを解説

    マンションオーナー

  • 賃貸物件のリフォーム事例を紹介!借りる前に知っておきたい情報を解説の画像

    賃貸物件のリフォーム事例を紹介!借りる前に知っておきたい情報を解説

    マンションオーナー

  • 賃貸物件のリフォームは築年数で変わる?費用や効果もあわせて解説の画像

    賃貸物件のリフォームは築年数で変わる?費用や効果もあわせて解説

    マンションオーナー

  • 賃貸物件のリフォームや耐震工事は必要?所有者が知るべき費用と選び方の画像

    賃貸物件のリフォームや耐震工事は必要?所有者が知るべき費用と選び方

    マンションオーナー

  • 賃貸物件の収益アップに効果的なリフォームとは?空室対策のポイントも解説の画像

    賃貸物件の収益アップに効果的なリフォームとは?空室対策のポイントも解説

    マンションオーナー

  • 賃貸物件のリフォーム助成金はどんな制度?申請前に知っておきたいポイントを紹介の画像

    賃貸物件のリフォーム助成金はどんな制度?申請前に知っておきたいポイントを紹介

    マンションオーナー

もっと見る